日本でも選択的夫婦別姓を認めるべきか?
目次 | 選択的夫婦別姓(氏)制度とは | 当事者の声は伝わらない | 旧姓使用・旧姓併記が認められる場面が増えている | 旧姓使用や事実婚の限界 | 別姓夫婦の間に生まれた子ども | 別姓を反対する意見 | まとめ | 参考にした資料 | 関連イシュー |
選択的夫婦別姓(氏)制度とは
現在、日本の法律では、日本人同士が結婚すると、夫婦どちらかの姓(氏)に統一しなければならない、と決められています。
多くの夫婦は、婚姻時には夫の氏を選択しています(令和4年、2022年では、約95%が夫の氏)。
選択的夫婦別姓(氏)制度とは、夫婦が婚姻する際に、夫婦が望めば、夫婦それぞれが婚姻前の氏を名乗り続けても良いことを認める制度です。
現在の民法では「夫または妻どちらかの氏」に統一すれば良いと定めているとはいえ、ほとんどが夫の氏を選択している現状を考えると、改姓を望まない女性や改姓をした男性はマイノリティとして扱われることは否めません。
改姓をした側(多くは女性)にとっては、改姓に伴って職業上、日常生活上の不便・不利益、アイデンティティの喪失など、様々な問題が起こることが指摘されています。
また、別姓を望むカップルが、事実婚を選択して、また別の不利益を被るということも起こっています。
そこで、現在の民法を夫婦同姓でも、別姓でも婚姻ができるように改正しようというのが選択的夫婦別姓制度です。
当事者の声は伝わらない
結婚して改姓をする当事者になるケースは、30歳前後(平均初婚年齢)の女性が想定されます。
令和3年度に内閣府が行った「家族の法制に関する世論調査」では、男性より女性が、そして70歳以上の人よりも若い世代の方(特に18~49歳)が、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と回答していました。
しかし、法律を決める政治家は高齢者の男性が多い現状を考えると、その当事者の声は届いているように思えません。
旧姓使用・旧姓併記が認められる場面が増えている
女性の社会進出に伴って、婚姻や離婚による改姓で不利益をなるべく被らないように、旧姓使用を認める企業も増えてきています。
大きな企業は社員をデータで管理しており、それほど大変なことではないようですが、給与や税金、出張費等の金銭が関係する場面では戸籍姓が必要となる等、二つの氏(姓)を使うことの煩雑さは残ります。
また最近では、旧姓と戸籍姓の両方を記載できる公的な書類も増えてきました。
例えば、住民票やマイナンバーカード、旅券(パスポート)に加え、運転免許証等でも旧姓併記が認められています。
旧姓使用や事実婚の限界
ただし、旧姓を併記したからと言って、使える範囲には限界があり、例えば旅券(パスポート)に旧姓の記載があってもICチップには戸籍姓データしかないため、航空券やビザは戸籍姓で取ることが一般的ですし、旧姓併記書類を見せても銀行口座等で旧姓での口座利用を断わられるケースも多くあります。
現在のところ、旧姓に届いた不在郵便を郵便局等に取りに行く際に効力を発揮する、という程度にしか活用できないのが現状です。
また、夫婦どちらも改姓を避けたいことから、事実婚を選択する夫婦も増えています。
事実婚とは、婚姻届けを出さないで夫婦と同様の暮らしをする形です。
しかし、事実婚は法律上の夫婦ではないため、税制上の不利益を被ったり、子どもを育てる上でも夫婦一緒に親権を持てなかったりする等、様々な問題が生じます。
別姓夫婦の間に生まれた子ども
別姓に否定的な人の意見として、「別姓夫婦の間に生まれた子どもが可哀想」というものがあります。
現在の民法では、別姓自体が認められていませんので、「日本人同士で民法上別姓である夫婦の間に生まれた子」は存在しませんが、事実婚夫婦の間に生まれた子や、子どもが生まれた後に事実婚にして育てている夫婦、外国人と結婚すると別姓を選べることから外国人との間に生まれた子、夫婦の片方が旧姓を使用し表面上は別姓である夫婦の間の子等、「状況的にみて別姓夫婦の間に生まれた子」は既に多く存在しています。
これらの子ども達はインタビューや調査等の結果から、家族内でお互いを氏(姓)で呼び合うこともないことや、親が別姓だから不幸、可哀想であるという回答はなく、むしろ社会的な制度が整っていない事での不利益や奇異の目などに不満を感じていることが明らかになっています。
中には、「家族全員が同じ氏(姓)の人が多いことを知って驚いた」というコメントもありました。
別姓を反対する意見
選択的夫婦別姓を反対する意見としては、例えば夫婦同氏が日本社会に既に定着している制度である、というものがあります。
現在の夫婦同姓制度は明治時代からとされ、当時は戸主(家の代表・多くは父親や長男)の名前を名乗るようになり、それより前には庶民は氏を名乗ることは許されませんでした。
既に現在の日本に定着している制度を変える必要はない、という意見があります。
別姓に反対する保守派の自民党議員が提出した請願書によると、本来は婚姻による改姓は喜ぶべきものであり、改姓による不利益は通称使用をすればほとんど無く、個人の嗜好やアイデンティティを優先すれば個人主義になり、共同体意識が無くなる、という意見や、家族が同氏であることで一体感を持つ強い絆のある家庭に、健全な心を持つ子どもが育つという意見等があります。
他には、氏(姓)は個人が自由に決めるためのものではなく、公的制度の問題であり、そもそもどちらの氏(姓)が良いという主張自体がおかしいという意見もあるようです。
当事者以外には伝わりにくい「別姓にしたい」という気持ちですが、当事者でないからこそ考える必要があるのではないでしょうか。
自分が改姓するとしたら、あなたの友人が別姓を望んでいたら、等、身近な問題として考えてみてください。
あなたは、どう考えますか?
まとめ
≪選択的夫婦別姓を認めることに賛成する理由≫
■結婚しても氏(姓)を変えたくない人が結婚できないことはおかしい。
■世界的にも「夫婦同姓」を強いている国は珍しく、日本では個の尊重がされていない。
■ほとんどの夫婦は、婚姻時に女性が氏を変更している(約95%)。
→結局、女性が改姓を強いられることも問題である。
■全員が別姓になるわけではないので、別姓をしたい人だけが選べば良い。
≪選択的夫婦別姓を認めることに反対する理由≫
■家族としての一体感が失われてしまう。
■同じ家族は同じ氏(名字・姓)であるという印象が強いので、ややこしい。
■もし子どもが生まれたら、どちらの氏にするのか決めにくい。
■通称使用で充分である。
■戸籍制度が崩壊してしまう。
参考にした資料
夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ(内閣府 男女共同参画局)
選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について(法務省)
令和3年度世論調査「家族の法制に関する世論調査」(内閣府、令和3年12月)
第173回国会請願の要旨 602:選択的夫婦別姓の法制化反対に関する請願
第173回国会請願の要旨 175:選択的夫婦別姓制度の法制化に反対することに関する請願
関連イシュー
【選択的夫婦別姓】夫婦同姓は「人格的利益の侵害」か、それとも日本の「麗しき慣習」か?(2021年実施)
【選択的夫婦別姓】夫婦同姓は「人格的利益の侵害」か、それとも日本の「麗しき慣習」か?(2022年実施)
【選択的夫婦別姓】夫婦同姓は「人格的利益の侵害」か、それとも日本の「麗しき慣習」か?(2023年実施)
オピニオン
2025/02/14 18:26 (編集済)
2025/02/14 09:27
選択的夫婦別姓の採用により家族の一体感や子供に対する影響についても考慮する必要があるのではないでしょうか。
2024/02/13 17:06 (編集済)
2024/02/13 08:08
選択的夫婦別姓制度を認めることで、日本の家族制度や家族同様の伝統が揺らぐと思わないのですか?
2024/02/16 10:49
2024/02/16 01:50
それは確かに一面的視点ではありますが、選択的夫婦別姓を許可することで生じる可能性のある家族の絆や伝統の破壊についてどのように思われますか?
2024/02/13 17:40
2024/02/13 08:41
では、伝統や家族の結束を示す一つの象徴としての同姓制度にはどのような価値を見いだしていますか?
2024/02/14 03:54 (編集済)
2024/02/13 18:54
選択的夫婦別姓を認めると、家族の結束力や伝統を失い、混乱を招く可能性があると考えられるため、それについてはどう思いますか?
2024/02/13 20:47
2024/02/13 11:47
伝統や家系を重んじる日本の文化を考慮に入れても、選択的夫婦別姓の導入にはやはり賛成ですか?
2024/02/14 08:00
2024/02/13 23:01
一丁目一番地という表現は何を意味しているのでしょうか?
2024/02/14 20:58
2024/02/14 11:59
夫婦の一体感や家族としての結束感を重視する意見はどう思いますか?
2024/02/15 11:02
2024/02/15 02:08
しかし、伝統や文化の観点から考えると、夫婦同姓制度を保つことも重要ではないでしょうか?
2024/02/16 12:35
2024/02/16 03:37
しかし、夫婦別姓が認められると伝統的な家族の絆や相互信頼関係が崩れるのではないでしょうか?