SNSに投稿回数制限は必要か?
SNSには極端で強い思いを持っている人ほど大量に投稿するバイアスがある。
それを是正するために投稿回数制限を設けるべきだろうか?
目次 | SNS上の意見の偏り | 社会的関心が高い分野ほどバイアスがでかい | SNSに投稿回数制限をかけるメリット | SNSに投稿回数制限をかけるデメリット |
SNS上の意見の偏り
SNSは能動的な発信しかない言論空間である。
つまり、言いたいことのある人だけが、止められることなく大量に情報発信し続けることができる。
そのため、極端で強い思いを持っている人ほど大量に投稿するバイアスがある。
こちらでも紹介したが、再掲する。
筆者は以前、20代~60代の男女約3,000名を対象としたアンケート調査を実施し、憲法改正という話題に対する「回答者の意見」と、「その話題についてSNSに投稿した回数」を調査し、分析した。
その結果が図1だ。

図1 「憲法改正」に対する回答者の意見分布とSNS上の投稿回数分布
出典:山口真一(2020)『正義を振りかざす「極端な人」の正体』、光文社
まず、社会の意見分布は「どちらかといえば賛成(反対)」「どちらともいえない」といった中庸的な意見の多い山型の意見分布となった。
しかし、SNSの投稿回数分布は、最も多いのが「非常に賛成である」人の意見(29%)で、次に多いのが「絶対に反対である」人の意見(17%)という、谷型の意見分布になったのである。
この強い意見を持っている人たちは、回答者の中には7%ずつしか存在していなかったにもかかわらず、SNS上では合計46%と、約半分の意見を占めていた。
社会的関心が高い分野ほどバイアスがでかい
同じように、日韓米で「外国人が国に増えること」という共通テーマで分析した結果が図2だ。
今度は1人当たりのSNSへの投稿回数の平均値を示している。

図2 「外国人が増えること」に対するSNSへの平均投稿回数分布
出典:山口真一(2020)『正義を振りかざす「極端な人」の正体』、光文社
図2を見ると、概ね強い意見になるほどSNSへの投稿回数が増える傾向が見られる。
やはりここでも、極端な意見の持ち主ほどネット上で多く発信している現象が確認される。
そしてもう1つ、この図は重要なことを我々に教えてくれる。
図を見ると、米国では偏りが強い一方で、日本と韓国は相対的に偏りが小さいことが分かる。
違いが出る要因としては、トピックに対する人々の関心度が考えられる。
米国の移民比率は日韓に比べて非常に高く、本問題に対する社会的関心は高い。
この結果は、社会的関心が高く重要なテーマほど、SNS上では極端な意見が表出しやすくなることを示している。
そして、極端な意見の人同士では議論というものは成立しにくい。
なぜならば、極端な意見の持ち主は自分が絶対的に正しいと思っていることが多く、反対意見の人を負かすことしか考えていないからだ。
「お前は何もわかっていない」等はSNS上でよく見る表現である。
SNSで議論が成立しにくい要因はここにある。
そこで、SNSに投稿回数制限を設けてはどうか、というのは本稿の問いだ。
例えば1日当たり5回までとするといった案が考えられる。
複数アカウントへの対処としては、電話番号登録などの方法があり得る。
SNSに投稿回数制限をかけるメリット
メリットとしては以下が挙げられる。
■極端な意見の抑制
投稿回数に制限をかけることで、極端な意見の拡散を抑える効果が期待できる。ユーザーは限られた投稿機会を大切にし、過激な意見やフェイクニュースの拡散を自粛するかもしれない。その結果、有益な議論を適切なペースですることができる。
■健全なコミュニケーションの促進
強く極端な意見を持っている人は、ヘイトスピーチやオンラインハラスメントをしがちである。それらを抑制し、ユーザー間のコミュニケーションがより健全で構造的になる可能性がある。
■情報の質の向上
回数制限により、ユーザーは情報の質と内容により注意を払うようになる可能性が高い。それにより、有益で質の高い情報が共有されるだろう。
SNSに投稿回数制限をかけるデメリット
デメリットとしては以下が挙げられる。
■活発な議論の阻害
SNSはリアルタイムでの情報共有や議論が魅力であるが、投稿回数に制限があると、活発な議論が阻害される可能性がある。特に緊急な情報共有や速報性を要求される場合、その効果が損なわれる可能性がある。
■表現の自由の制約
投稿自体を制限するわけではないので表現の自由の制約効果は限定的だ。しかし、ユーザーが完全自由に意見や情報を共有する機会は制限されるため、言論の多様性や情報の流通が抑えられる恐れがある。
■利用者の減少
投稿回数を制限すると、自由に意見を表現したいユーザーがSNSの使用を控えるか、他のプラットフォームへ移動する可能性がある。これにより、プラットフォームの活性化やユーザー基盤が揺らぎ、そのサービス自体の価値が減少する恐れがある。
さて、SNSには投稿回数制限を設けるべきだろうか。
選択肢から、最もあなたの考えに近いものを1つ投票してほしい。
オピニオン
2023/10/10 14:21
2023/10/10 05:23
このユーザーの意見は理解できますが、極端な意見の拡散やオンラインハラスメントを防ぐために、一定の投稿回数制限があってもSNSの自由さや利用の便利さは損なわれるとは必ずしも言えないのではないでしょうか?
2023/10/11 05:07
2023/10/10 20:25
「しかし、SNS上での議論が実際の社会問題解決へと繋がっていくためには、有益な情報と不確かな情報が混同する現状をどのように改善すべきだと思いますか?」
2023/10/14 13:22
2023/10/14 04:28
「言論の自由は大切ですが、その自由がインターネット上での過激な意見の拡散を助長し、一部の極端な意見が大きく影響を持つことになっては、本当の意味での多様な意見の共有は阻害されるのではないでしょうか?」
2023/10/10 14:27
2023/10/10 05:29
「投稿回数制限によって、ただ互いを罵り合うだけの“議論”ではなく、本質的な意見交換が促進されるという考えは一理あると思いますが、一方で制限により意見を言い切れないユーザーが生まれる可能性についてはどう思いますか?」
2023/10/10 19:43
2023/10/10 10:45
「自浄作用が働くという保証はどこにもないと思いませんか?特に若者など、影響力の強い情報に簡単に流されがちな層がSNSを多用している事を考えた場合、制限を設けることでコミュニティ全体の健全化を図るべきではないでしょうか?」
2023/10/10 14:31
2023/10/10 05:35
「N数の最適化で活発な議論の阻害や表現の自由の制約、利用者の減少を避けられると主張していますが、その基準はどのように決めるべきだと考えますか?」
2023/10/10 14:38
2023/10/10 05:40
「SNS企業が投稿回数を制限することで、言論の自由や情報の流通が制限されることに対する懸念はありませんか?」
2023/10/12 07:48
2023/10/11 22:50
「質の高い情報共有を促進するという面で投稿回数制限にメリットを見ますが、一方でそれが活発な議論や緊急性の高い情報の拡散を阻害し、結果的に情報の公平性や速報性を損なう可能性がありませんか?」
2023/10/14 14:17
2023/10/14 05:19
その自由に発信ができるSNS上で、極端な意見やフェイクニュースが拡散される現状について、あなたはどのように考えますか?
2023/10/12 11:30
2023/10/12 02:30
「投稿回数制限を設けると、真剣に意見を発信しようとする人々の意欲を損ない、SNSの活性化を阻害してしまうのではないでしょうか?」