宗教法人の売買は許されざる行為か?
近年、寺院の買収が活発化してきている。
宗教法人格を取得し、非課税部分を利用して税金対策をする手法などである。
寺院が民間企業にたいし、対価を得て宗教法人の名義を貸すケースもよくあるが、どちらも違法だ。
宗教法人格の売買は、資産隠しなどの不法行為の温床になったり、カルト教団がアジトとして活用したりするなど地域の安全を脅かす元凶にもなっている。
宗教法人の売買を規制する法律の整備(宗教法人法改正)を進めるべきだろうか?
目次 | 宗教法人が投資商品に | 刑事事件で逮捕者も | 寺院の後継者不足が深刻化 |
宗教法人が投資商品に
「宗教法人の売買」が、水面下で横行している。
現在、ウェブサイト等を通じ、法人格の売買を手がけるブローカーが多数存在する。
宗教法人の売買は遵法精神に欠ける、あってはならない行為である。
あるブローカーのサイトでは、都内の宗教法人が「利回りを考え投資案件として」などとうたい、8億円以上の価格で販売している。
また、別のブローカーは100法人を超える売買リストを掲載し、「節税に最適」「単立化の作業中」「ペーパーのみの禅譲」などと宣伝している。
にわかに信じがたいことだが、寺院や神社が公然と販売されていることがわかる。
売買の背景は様々だ。
民間企業や、資産家が宗教法人格を取得し、非課税部分を利用して税金対策をする手法だ。
資産隠しなどの不法行為の温床になっている。
刑事事件で逮捕者も
宗教法人格の売買を巡っては、しばしば刑事事件にも発展している。
福岡市のA寺では2009年に土地所有権が不正に移転登記され、神社の代表役員らが逮捕されている。
逮捕された役員らは「納骨堂などをつくって売却するため、寺を乗っ取るつもりだった」と供述していた。
この事件では暴力団もからんでいた。
また、2010年10月には、詐欺容疑で京都市内にあるB寺の住職や責任役員が逮捕されている。
この寺は重要文化財の本尊を抱え、天皇家ゆかりの名刹であった。
民間企業への譲渡代金は1400万円で、企業側は前金700万円を支払った。
しかし、宗教法人格は譲渡されなかったため、被害届を提出した、というものだ。
水面下でトラブルになっているケースは、いま現在でも相当数あるとみられる。
寺院の後継者不足が深刻化
なぜ、寺は宗教法人格を売りたがり、企業や個人は買いたがるのか。
寺院側の事情としては、経済的な困窮が挙げられる。
近年、檀家減少などに伴って、次期住職に引き継げないケースが頻発している。
後継者がいれば寺院を維持し、資産を残そうと考える。
しかし、いずれ寺が無住化するのなら、住職の中には寺を売却し、老後資産に充てようと考える者もいそうなものだ。
宗教法人格を売った手元資金を“持ち逃げ”して、還俗すれば、老後の生活が担保できるからだ。
売買される宗教法人のほとんどが単立寺院である。
売買を目的に、包括関係を解消して単立化する動きも加速している。
しかし、宗教者としてこのような身勝手な行動は決して、許されることではない。
先述のように、脱税行為を助長することにもなるだけでなく、カルト宗教が既存の寺社を手に入れて活動を始めることも考えられる。
宗教法人の売買を通じて、地域の安全が脅かされることになりかねない。
仮に寺院の継承者がいなければ、宗門に相談して継承者をマッチングしてもらうか、地域の資産として檀家組織や地域が管理していく仕組みを考えるか、あるいは解散すべきである。
しかし実際のところ、寺院の承継問題は深刻だ。
後継者の決まっていない寺は、浄土宗本願寺派では30%、日蓮宗では43%、浄土宗では46%となっている。
寺院が承継できなければ すなわち「空き寺」になる。
空き寺の増加とともに、宗教法人の売却例が増えていくのは必然といえる。
今後、単立寺院や不活動法人が増加していくなか、こうした闇ビジネスはさらに増加していく。
社会の宗教法人への信頼が崩れていくことにもなりかねず、対策が急務だ。
そこで、読者に問いたい。
宗教法人の売買を規制する法律の整備(宗教法人法改正)を急ぐべきか、どうか。
選択した人は、そう思う理由も答えてほしい。
2023/06/25 16:21 (編集済)