投票率を上げるために「郵送投票」は検討されるべき?
■このイシューの3点ポイント
①このイシューは、日本の選挙における低投票率の原因を探り、特に郵送投票の可能性や課題について考えます。
②若者や高齢者の投票率低下は、それぞれ政治への関心の薄さや身体的な制約が原因とされており、郵送投票の導入拡大は投票率向上の可能性がある一方で、不正の危険性やコスト増などの課題が議論されています。
③郵送投票を広く認めるべきでしょうか?日本の選挙制度の未来について一緒に考えてみましょう。

目次 | 下がり続ける選挙の投票率 | 日本の郵送投票の実施状況 | 検討すべき郵送投票の可能性 | 参考にした資料 |
下がり続ける選挙の投票率
本年、11月27日に投票が行われた衆議院選挙の投票率は、53.85%で前回・3年前の選挙を2.08ポイント下回り、戦後3番目に低いものとなりました。
選挙の度に話題となるのが、若者の政治への関心の低さ、投票率の低さについてです。
いかにして若者の政治への興味を高めるか。
平成28年6月には選挙年齢を満18年以上に引き下げる法令改正も行われ、高校生に対する政治や選挙等に関する学習指導も行われています。
総務省が、平成28年12月に実施した「18歳選挙権に関する意識調査」(*1)によると、18〜20歳の若者が選挙に行かなかった理由の上位に上がったのは、「今住んでいる市区町村で投票することができなかったから」「選挙にあまり関心がなかったから」「投票所に行くのが面倒だったから」などの回答でした。
では、実際の年齢別の投票率を見てみましょう。図表1は令和3年に行われた第49回衆議院選挙の年齢別投票率を示したものです。
図表1

総務省「よくわかる投票率」を筆者加工
※全国の投票区の中から抽出した188投票区の平均
これを見ると若者層の投票率はたしかに低く、年齢が上がるに従って投票率も上昇しています。
一方で70代後半でも投票率は下がっており、80歳以上では48.51%と30代後半の投票率並みとなっていることがわかります。
若者の投票率が低い理由は、先に述べた関心の低さにありますが、高齢者のそれは、足腰の衰えで投票所に赴くことが困難となること、健康状態の低下、認知機能の衰えなどが考えられます。
選挙そのものへの関心の低下もあるでしょう。
過疎地では投票所の統廃合により、近隣の投票所がなくなったことも考えられます。
投票所数は平成13年7月第19回参議院選挙の53,439箇所をピークに減少を続け、令和3年の第49回衆議院選挙では46,455箇所と約7千箇所も減少しています。
日本の郵送投票の実施状況
日本の投票制度は、基本的に投票所に赴くことが原則となっています。
しかし、投票所に行くのが面倒と考える若者や、物理的に投票所に赴くことが困難な高齢者に対して、代替手段として考えられるのが「郵送による投票」です。
米国の大統領選挙でも、多くの投票者がポストに投票用紙を投函している姿がテレビでも流れていました。
コロナ禍という特殊要因はあったものの、2020年の大統領選挙では約46%の有権者が郵送投票を利用したと報告されています。
郵送投票の利用率は、州によって異なっているようですが、以前は10%から20%の割合で推移していたようです。
今回の大統領選の郵送投票率はまだあきらかになっていませんが、30%程度と予想されています。
米国のこうした状況に対して、日本の郵送投票率はどうでしょうか。
「よくわかる投票率」(*2)(令和6年「総務省投票部」)によると、令和4年参議院選における郵送投票者数は18,857人に留まっています。
投票者数(全国区・比例代表)54,655,446人のわずか0.03%です。
米国の2、30%と比べるとあきらかに大きな開きがあります。
日本では、郵送投票については必要性が高い場合にのみこれを認めています。
具体的には、身体障害者手帳(要介護5もしくは身体障害1級〜3級(部位による))、戦傷病者手帳を持っている選挙人などに限定されており、投票に先立ち、郵便等による不在者投票をすることができる者であることを証明する「郵便等投票証明書」の交付を、選挙人名簿登録地の市区町村の選挙管理委員会に申請するなど、一連の手続きを経る必要があり、この手順の煩雑さも郵送投票を選択する有権者が少ない理由となっています。
郵送投票の実施状況は、各国でだいぶ幅があるようです。
特に大きな制限がなく広く認めているのは米国や英国です。
ドイツやカナダ、スウェーデンも事前申請を行えば、郵送投票を認めています。
日本と同じく、高齢者や障害者、病気などの理由がある人にのみ認めているのが、韓国、ニュージーランドなどの国々です。
検討すべき郵送投票の可能性
今後さらなる高齢化により投票所に赴くことが困難な高齢者が増加することは確実です。
要支援・要介護の人には郵送投票を認めるなど、郵送投票の条件緩和も今後検討されるべきでしょう。
あるいは、事前申請により郵送投票を広く多くの人に認めるという考え方もあります。
郵送投票を認めることにより、投票の利便性も向上します。
忙しい有権者も、自分のスケジュールに合わせて投票できるため、投票率向上につながることが考えられます。
これは高齢者のみならず、仕事に追われて投票する時間的ゆとりのない若者層や共働き層にも有効なはずです。
また数年前のパンデミックのように、物理的に投票所に赴くことが困難な状況下においても人々が安全に投票を行う方法が提供されることになります。
もちろん、不正やセキュリティの懸念や郵便事情による影響、集計の遅れ、投票の秘密保持が難しいなどの懸念点は多々ありますが、すでに導入している諸外国の方法などをうまく取り入れれば、郵送投票は検討に値すると思います。
投票権は日本国民に等しく与えられた権利です。
身体的理由により投票所に赴けない人に対しても、権利を行使するための代替的手段を国は積極的に検討するべきではないでしょうか。
参考にした資料
(*1)18歳選挙権に関する意識調査報告書(PDF)(総務省、平成28年12月)
(*2)よくわかる投票率(PDF)(総務省選挙部、令和6年3月)
オピニオン
2024/12/27 19:10
2024/12/27 10:18
投票の義務化と罰則制度を導入することで、有権者の自由意志を侵害する可能性についてはどう考えますか。
2024/12/27 20:33
2024/12/27 11:37
郵送投票の導入により、投票率向上や投票機会の均等化が期待される点についてはどう考えますか。
2024/12/27 22:55
2024/12/27 13:56
郵送投票によって投票のハードルが下がり、より多くの市民が政治に参加する機会を得られるという視点についてはどう考えますか。
2024/12/27 23:00
2024/12/27 14:01
郵送投票によって多くの人が選挙に参加できる機会を得ることで、より多様な意見が反映される可能性についてはどう考えますか。
2024/12/27 23:19
2024/12/27 14:20
郵送投票に反対する理由として、投票所に直接行くことの意義を重視されていますが、高齢者や障害を持つ方々のために郵送投票の条件を緩和することについてはどう考えますか。
2024/12/28 22:30
2024/12/28 13:31
投票率を上げるための方法として郵送投票を利用する際に、その過程で選挙や政治の理解を深めるための教育や情報提供の工夫も必要ではないでしょうか。
2024/12/27 15:36
2024/12/28 08:44
2024/12/27 23:50
郵送投票の条件緩和について考える際、高齢者や障害者を含む投票所に赴くことが困難な方々の投票権の行使がより容易になることで、結果として投票率が上がる可能性についてはどう考えますか。
2024/12/27 15:18
2024/12/27 06:21
郵送投票が投票率を向上させる可能性についてはどう考えますか。
2025/01/08 07:54
2025/01/07 22:56
事前申請を用いることで誰でも郵送投票が可能となる制度について、郵送投票に伴うセキュリティの懸念や不正利用のリスクについてはどう考えますか。